2025年8月に配信されたWindows 11の更新プログラム「KB5063878」を適用した後、一部の環境で「SSDが突然認識されなくなる」「Windowsが起動できなくなる」といった深刻なトラブルが多数報告されています。
症状は、BIOS上からSSDが消えてしまうケースや、エクスプローラーやディスクの管理でドライブが見えなくなるケース、さらにはデバイスマネージャーにエラーが表示されるケースなど様々で、ユーザーによってはSSDそのものが壊れたと誤解してしまうほどです。
しかし多くの場合、実際の原因はSSDの物理故障ではなく、更新プログラムとドライバやBIOS設定との相性不良、ブート構成の不整合、暗号化機能(BitLocker)の挙動といったソフトウェア的要因です。
本記事では、発生している症状の整理から原因の切り分け、優先度をつけて行うべき復旧手順、さらにデータを守るために避けるべき操作や再発防止の方法までを表やチェックリストで分かりやすく解説します。
突然SSDが「消えた」ように見えても、慌てず正しい手順を踏めば復旧の可能性は高まります。
※本記事は、更新後にSSDが認識されない/起動しないと見える状況を、データ保護を最優先に最短で復旧へ導くための実務ガイドです。環境差があります。作業は自己責任で、見えているデータは先にバックアップしてください。
この記事でわかること
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どの症状がどんな原因と結びつきやすいか(早見表)
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優先度順で試すべき復旧ステップ
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起動できる/できないそれぞれの詳細手順(GUI/コマンド)
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触ると危険な設定・やってはいけない操作
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予防:アップデートの安全な適用と再発防止
症状別:あなたはどれ?(早見表)
症状 | よくある表示/現象 | 可能性が高い原因 | 先に試すこと |
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OSが起動しない | 自動修復ループ/ブートデバイスなし | 更新とブート構成の不整合、ドライバ相性 | WinREで品質更新のアンインストール→ブート修復 |
起動はするがSSDが見えない | エクスプローラー/ディスクの管理に表示なし | NVMe/SATAドライバの相性、ドライブ文字未割当 | セーフモード→標準ドライバへ→ドライブ文字付与 |
BIOS/UEFIでもSSDが出ない | ストレージ一覧に不在 | 物理接触/スロット/放熱干渉、BIOS設定 | 通電オフ→再実装/別スロット/別PC検証→設定確認 |
デバイスマネージャーに「!」 | NVMe/IRST/RAIDにエラー | ベンダードライバと更新の衝突 | 標準ドライバに戻す or ロールバック |
BitLockerでロック | 回復キー要求 | 暗号化の挙動/署名周り | 回復キーで解除→更新回避→再暗号化 |
最短復旧:優先度付きチェックリスト
優先度 | 手順 | 目的 | 目安時間 | リスク |
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★★★ | 再起動×2–3回 | 一時的な初期化不良の解消 | 3分 | 低 |
★★★ | 外付け機器を外す(USB/拡張) | 競合の回避 | 3分 | 低 |
★★★ | BIOSでSSD表示を確認 | 物理/論理の切り分け | 5分 | 低 |
★★☆ | セーフモード起動 | 最小ドライバで検証 | 10分 | 低 |
★★☆ | KB5063878をアンインストール | 更新起因の回避 | 10–20分 | 低 |
★★☆ | NVMe/SATAを標準ドライバに | 相性解消 | 10分 | 低 |
★☆☆ | DISM/SFCで整合性修復 | 破損の回復 | 20–40分 | 低 |
★☆☆ | BIOSのVMD/RAID/AHCI確認 | 設定衝突の回避 | 5–10分 | 中(変更は慎重に) |
どの段階でもデータ保護最優先。見えたら即コピー。
原因ごとの見極めと対応(対応マップ)
原因候補 | 典型パターン | 見極めポイント | 取るべきアクション |
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更新×ドライバ相性 | Intel RST/AMD/メーカーNVMe | セーフモードだと見える/安定 | 標準ドライバへ変更/更新ロールバック |
ブート構成の不整合 | 更新中断・電源断 | WinREでOS検出不可 | 品質更新をアンインストール→bootrec/bcdboot |
BIOS設定の衝突 | VMD/RAID⇄AHCI切替 | 切替後に未起動化 | 元設定へ戻す/むやみに切り替えない |
物理/接触 | M.2固定不良・熱膨張 | BIOSでも不在 | 通電オフ→再実装/別スロット/別PC |
暗号化影響 | BitLocker | 回復キー要求 | キーで解除→更新戻し→再暗号化 |
ファイルシステム不良 | chkdskエラー | 読み取り可/書込みで悪化 | chkdskは慎重(バックアップ最優先) |
起動できる場合:GUI中心の詳細手順
1) セーフモードで起動
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設定 → システム → 回復 → PCの起動をカスタマイズ → 今すぐ再起動
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トラブルシューティング → 詳細オプション → スタートアップ設定 → 再起動
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「4)セーフモードを有効にする」
セーフモードで見える=ドライバ/サービス起因の可能性大。
2) KB5063878をアンインストール
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設定 → Windows Update → 更新の履歴 → 更新プログラムのアンインストール
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KB5063878 を選んでアンインストール → 再起動
コマンド(管理者):
3) ストレージを「標準ドライバ」に戻す
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右クリック→ドライバーの更新→「コンピューター上のドライバーを参照」
4) 「ディスクの管理」での確認
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Win+X → ディスクの管理
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未割り当てが見える:初期化は中止(既存データがある可能性)
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ドライブ文字なし:右クリック → ドライブ文字とパスの変更 → 文字を割当
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5) システム整合性の修復(必要時)
起動できない場合:WinRE(回復環境)からの詳細手順
1) WinREに入る
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起動中に強制電源オフを2–3回 → 自動修復 → 詳細オプション
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またはインストールメディア/回復ドライブ → 「コンピューターを修復する」
2) 最新の品質更新をアンインストール(GUI)
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トラブルシューティング → 詳細オプション → 更新プログラムのアンインストール
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「最新の品質更新プログラム」を選択(KB5063878相当)
3) パッケージ除去(コマンド)
4) ブート修復
BitLocker有効なら回復キーが必須。解除してから実施。
5) BIOS/UEFIの確認ポイント
データ保護:やってよい/ダメ表
区分 | やってよい | ダメなこと |
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バックアップ | 見えた瞬間にコピー/イメージ化 | 復旧前のベンチ・大量書込み |
物理作業 | 通電オフでM.2再実装/別スロット検証 | 通電中の抜差し |
初期化/フォーマット | データ不要な時のみ | 安易な初期化(復旧困難に) |
復旧ツール | 読み取り中心で使用 | ライト多発の復旧ツール乱用 |
暗号化 | 回復キー保全→一時停止 | キー不明のまま作業続行 |
予防と運用:次に同じ目に遭わないために
更新前にやること(必須)
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フルバックアップ(システムイメージ+重要ファイル二重化)
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復元ポイントの手動作成
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BitLockerは一時停止してから適用(完了後に再開)
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NVMe/IRSTなどベンダードライバは一時的に標準へ(相性回避)
更新のかけ方(運用)
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重要機は即日適用しない(数日様子見→段階ロールアウト)
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更新履歴(KB番号・日付・症状)を記録
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電源/ネット安定時に実施(更新中断リスクを下げる)
定期メンテ
よくある落とし穴(避けたいミスと回避策)
コマンド早見表(コピペ用)
要点の再整理
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KB5063878適用後の“SSDが消えた”現象は、実機ではドライバ相性・ブート構成不整合・BIOS設定の衝突などソフトウェア/設定要因が多い。
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最短ルートは 再起動→セーフモード→更新ロールバック→標準ドライバ→整合性修復。起動不能時は WinREで品質更新をアンインストールし、必要ならbootrec/bcdbootでブート復旧。
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何よりデータ保護最優先。見えた瞬間にバックアップ、初期化は最後。
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再発防止は 更新前バックアップ・BitLocker一時停止・段階適用・履歴記録 の徹底で。
まとめ
Windows 11更新プログラム「KB5063878」適用後に一部環境で発生しているSSD未認識や起動不能のトラブルは、多くの場合ハードウェア故障ではなく、更新とドライバやBIOS設定との相性不良、ブート構成の不整合、暗号化機能の影響といったソフトウェア的な要因が背景にあります。
復旧の基本は、まず症状を正しく切り分け、セーフモードでの確認や更新プログラムのアンインストール、標準ドライバへの切り替え、WinREからの修復などを優先度順に試すことです。
その際、初期化や不用意なBIOS変更といった“取り返しのつかない操作”は避け、データ保護を最優先に行動することが何より重要です。
さらに、日頃からバックアップを確実に取り、BitLockerを一時停止してから更新を適用する、アップデートは様子を見て段階的に導入するといった予防策を習慣化すれば、同様のトラブルを大きく減らせます。突然の不具合は誰にでも起こり得ますが、冷静な切り分けと備えがあれば被害を最小限に抑えられるでしょう。